長野県佐久郡南牧村 | 伊藤工務店 2024年竣工
南牧村・標高1,350mの極寒冷地で計画した木の住まい

佐久郡南牧村の施工事例。将来的に永住も見据えた別荘として計画した木の住まいです。
標高1,350m、冬季は−20℃にもなる極寒冷地で、傾斜地かつ既存立木を残した敷地条件の中、自然環境と調和しながらも快適に暮らせる家を目指しました。
良質な無垢材と手刻みによる木組み、大きく跳ね出した屋根など伝統的な家づくりを軸にしながら、真空ガラスや床下エアコン、木製サッシなど現代の技術も取り入れ、性能と意匠のバランスを整えました。
■傾斜地・既存立木を活かした配置計画(南牧村の自然環境に調和)
この家の計画にあたり、特に重要だったのは敷地と環境条件です。
標高1,350mという立地は冬の寒さが厳しく、断熱・気密・窓まわりの計画が住まいの快適性を大きく左右します。
また傾斜地であること、既存立木を活かすことも前提となり、建物の配置や窓の取り方、外部との関係性を丁寧に検討しました。
■伝統構法の家を建てたい──想いと設計の答え
お施主様の想いは、以下の内容でした。
・大工が主体となる伝統的な工法の家を建てたい
・間取りの自由度や快適性は、現代住宅と同レベルのものが欲しい
・工期に余裕はあるので、しっかり手間をかけてつくってほしい
伝統工法と現代住宅の快適性は、時に相反する条件になります。
伊藤工務店ではお施主様と対話を重ねながらバランスを取り、
①良質な無垢材、手刻みの木組み、大きく跳ね出した屋根など伝統建築の良さを軸にする。
②吹き抜け空間、真空ガラス(断熱性)、床下エアコン、木製サッシ、自然由来の新建材などを取り入れ、快適性とのバランスをとる。
という形に落ち着きました。
■伝統を軸に、極寒冷地でも快適に暮らすための断熱・窓・暖房計画
伝統的な家づくりの良さとして、伊藤工務店が大切にしているのは、良質な無垢材、手刻みによる木組み、そして大きく跳ね出した屋根など、構造と意匠が一体となった質実剛健なデザインです。
一方で、極寒冷地で快適に暮らすためには現代の性能も欠かせません。
この住まいでは、吹き抜け空間を取り入れながらも、真空ガラスによる断熱性の確保、床下エアコンによる暖房計画、木製サッシや自然由来の新建材などを採用し、伝統と性能の両立を図りました。

■吹き抜けを中心にした、明るく開放的な間取り
間取りは、吹き抜け空間を中心に、開放的で明るい構成としています。
同時に、伊藤工務店の設計では「間取りだけ」から考えるのではなく、木組みが整然と美しく見えることを重要な軸としています。
この家では、一間(1818mm)のグリッドを崩さずに計画し、間取りと木組みが融合して、構造の美しさが自然に伝わる空間を目指しました。
伊藤工務店が考える「住み継がれる良い家」は、シンプルでフレキシブルな家です。
現代の複雑な動線計画や利便性に偏りすぎた間取り設計とは、あえて距離を置き、ある部分では人が建築構造に合わせて暮らしていくことも必要だと考えています。
■手刻みの木組みの見せ場をつくる構造計画
この家では、木組みの見せ場を意図的につくり、構造の魅力がしっかり伝わる計画としました。
構造を単なる「見えない骨組み」にせず、住まいの中心的な価値として扱うことが、伊藤工務店の家づくりの特徴です。
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造作キッチンとハーフバス|木の質感とメンテナンス性の両立

キッチン・水回りは、造作と既製品を使い分け、質感とメンテナンス性の両立を図りました。
・キッチン:木工家具屋によるオーダー
この地域で取れた山桜材を使用し、食洗機など現代設備も組み込んでいます。
・洗面台:大工造作
耐水性の高い槙材をカウンターに使用し、洗濯乾燥機などの設備もすっきり納まるデザインとしました。
・風呂:既製品(ハーフバス)+大工造作
「桧風呂の雰囲気の良さ」と「ユニットバスの防水性・メンテナンス性」を両立する考え方です。

「洗面所」
洗面脱衣室は手洗い、脱衣、洗濯、収納、多くの機能が小さい空間に詰まっています。
お客様が選定した設備(手洗いボール、水洗金具、タイル...)や収納棚との取り合いなど複雑な条件の中で使い勝手と見た目のスッキリさを両立させることはとても難しい作業です。
造作・家具・建具

この家では、造作や家具にも良質な材料を用い、手間をかけて丁寧につくり込んでいます。
・本棚:姫小松の一枚板(無節)
・下駄箱:姫小松の一枚板(無節)
・階段:一間幅(1818mm)の階段
一枚物の赤松を用い、反りを抑えるために見えない裏側から楔をかわせるなど、木の性質に合わせて手をかけています。
せっかく伊藤工務店にご依頼いただいたのだから、可能な限り良い材料で良い仕事を。
その積み重ねが、お施主さまの満足感や愛着につながると考えています。

【大工造作枠と木製建具(真空ガラス)】
木製建具は木造建築に調和し、より完成度を高めてくれます。
寒冷地における外部木製建具の問題点は気密性です。
この問題を解決するため可動部に隙間のできやすい引き違い窓ではなく、機構上密閉しやすい滑り出し窓を採用しました。
また可動窓(滑り出し窓)を小さくし気密性の高いFIX窓と組み合わせることでより効果を高めました。
木製サッシメーカーの窓に比べ価格も安く建物に調和してスッキリと見せることができます。
真空ガラスは一般的なペアガラスよりも断熱性が高いだけでなくガラス自体の厚みが薄いため構造上ガラスの厚みがネックになっていた木製建具と非常に相性が良いと言えます。
※木製建具は一般的なサッシに比べ水に弱いので外部に採用する場合は、屋根や庇で雨をカバーする必要があります。
※木は内部に多くの空気を含んでおりアルミよりも断熱性は高いと言えます。
「補足事項」
木製建具とは、地場の建具職人の手仕事により作られる窓やドアのこと、窓やドアが取り付く枠は大工造作によって作られる。
サッシとは工場で量産(場合によっては特注)される工業製品窓のこと
木製サッシ(木製建具の気密性を解決するため高性能なレールや気密部材が使われている木製窓)アルス、森の窓など
一般的なサッシ(昔はアルミサッシを指していたが今は樹脂サッシが主流)YKK、リクシルなど
・価格
木製サッシ>木製建具>樹脂サッシ
・気密断熱性能
樹脂サッシ=木製サッシ>木製建具
・建物との調和、デザイン性
木製建具>木製サッシ>樹脂サッシ
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伊藤工務店の担当範囲
この施工事例では、以下を一貫して担当しています。
・設計(構造・間取りを含めた設計全般 ※構造計算は外注)
・施工(木工事を自社施工:構造材の手刻み・組み立て、各種木造作工事 ※他業種は外注)
・現場管理(現場統括、品質管理、各職方への伝達調整)
・監理(設計図書と現場の整合確認、施主への報告)
設計から施工までを一貫して行うことで、意図のズレや手戻りを減らし、品質を安定させることができます。
また、外部に依頼する工程を必要最小限にすることで、コスト面でも無理のない家づくりにつながります。
※一般的に「木工事」は、刻み・構造材の組み立て・現場造作など、大工が行う工事全般を指します。
南牧村で木の家を建てるなら──伊藤工務店の家づくりまとめ
伝統的な家づくりを軸にしながら、現代の性能や設備も取り入れ、
極寒冷地でも快適に暮らせる住まいを目指した長野県佐久郡南牧村の施工事例です。